協議離婚に手切金は有効な手段?

そもそも「手切金」ってどんな時に提示するの?!

 

手切れ金のイメージ画像

 

協議離婚とは、基本的に夫婦で話し合いを行い離婚の際の条件などを合意したうえで離婚を成立させることです。浮気などの不貞行為のほか、DVなど婚姻を継続しがたい理由などの法定離婚事由がない限り、離婚を成立させるには双方の合意が必要であることは、これまでご紹介してきた通りです。例えば、「別に好きな人が出来たから別れて欲しい」という理由では、当然離婚は認められない訳で、夫婦いずれかが拒否すれば離婚することはできません。ただし、こうした状況では既に心が離れてしまっているため、遅かれ早かれ離婚になってしまうケースも多いのですが、時にはすぐに別れて欲しいがために、いわゆる手切れ金や和解金として金銭の支払いが提示されることがあります。別名「離婚解決金」とも言いますが、このいわゆる手切金においては、人によって様々な意味合いを持つものとなります。

たとえば、結婚して長年一緒に連れ添ったものの、歳とともに変化する考え方や価値観によって、夫婦関係を継続することが困難になったとします。心機一転新たな生活をしたいと、夫から離婚の申立てがあったとした場合、夫の身勝手さはあるものの、特に大きな過失があるわけではない一方、離婚を突き付けられた妻は当然離婚に納得できるはずもなく、簡単に同意をすることができません。こうした場合に、当面の生活費などの意味合いとして支払われるのが解決金です。もちろん妻から夫へ支払われる逆のケースもあります。解決金を提示する背景はケースバイケースですが、多額の解決金を提示すれば早期に離婚成立が図れるということもよくあり、離婚理由がはっきりしない場合には大きな効力のある解決方法になります。

 

なぜ趣旨が曖昧な手切金が活用されるの?!

 

 

このように、離婚解決金というのは財産分与でもなく、慰謝料でもない、その内容が特に定まっているものではなく、離婚条件の中ではいかようにも解釈できるあいまいな金銭です。しかし、この曖昧なところが便利で使いやすいという側面もあります。たとえば、離婚する際に取り決めをする財産分与・慰謝料・養育費・婚姻費用などにプラスアルファの金額を上乗せしてすべてを一括りに解決金と呼ぶことができる便利な言葉なのです。「慰謝料」で支払えばいいのでは?ということもあるかもしれませんが、慰謝料という名目は「不倫や借金などで相手に精神的苦痛を与えたことに対する損害賠償」ということになっています。これにより慰謝料という名目では支払う側の立場が悪くなりマイナスイメージが定着してしまいます。しかし解決金はそれ自体の名目がなく広義なので支払う側や受け取る側の立場を悪くすることなく離婚がお金で解決できるのです。

ただし、皆さんが想像するとおり、金銭を支払ってでも早く離婚を成立させたいという状況下で用いられるのが手切金となりますので、早く別の人と一緒になりたいために用いられることが多い傾向にあります。もちろん離婚を成立させたくないのであれば、手切金を提示されても応じなければ良いだけですし、交渉次第では手切金の額を引き上げることも可能です。不貞行為などに対する慰謝料には大よその相場がありますが、手切金には相場がありませんので、提示する側の財産状況などを鑑みて、自身にとって有利となる金額を引き出させることもできる点では、慰謝料とはまったく趣旨の異なるものです。上述のとおり、気持ちがすでに離れてしまっている状況においては、心理面で手切金が有効に働くケースも多く、それゆえに現在でも手切金が活用されている背景にあるようです。

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提示の仕方によってデメリットとなる場合も!?

このように、曖昧ゆえに便利な方法となる離婚解決金ですが、金額の内容が不明瞭であり、受け取り側としてはいかようにも捉えることができるため、解決金を支払って離婚が成立したにも関わらず、後になって慰謝料の請求をされるケースも少なからずあるようです。これは、解決金が「民法によって請求する根拠が法律で明確に決められている」性質のものではないためです。つまり、支払う側が「慰謝料含めての解決金だった」としても、受け取る側が「慰謝料は別」だと認識していたとすれば、その主張が通ってしまうため、こうした行き違いを防ぐためにも離婚協議書を作成する際に「金銭の支払いはすべて清算済み」という一文を記載することが望ましいでしょう。

また、言うまでもなく手切金=解決金という趣旨のものですので、一回のみ受け取れる一時金となります。もちろん、夫婦間の協議で分割支払いという合意が取れていれば、養育費のように毎月一定額を支払うケースもありますが、手切れという観点からも一括払いするケースが多いようです。上記のように、離婚協議書において明文化しておけば、一度支払った解決金をまた請求されることもないですし、逆に請求することもできません。離婚を成立させるためにも手切金自体は有効な手段かもしれませんが、金額提示や支払い後の扱い方など間違えないよう双方でしっかりと話し合い、合意した内容を書面に残し、確実に履行することが肝要です。

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